新型コロナウイルスの影響により、リモートワークが主流となってきました。
オフィスに行く必要がなくなり、基本的には自宅で仕事をする人が増えている中で、会社によってはどうしても出勤しなくてはならない業務もあります。
それが「押印業務」です。
上司の印鑑が必要なため、出勤しないとその印鑑がもらえない場合などは、直接会う必要があります。
極力、人と対面で話すことを避けることをコロナ感染拡大の対策としてとられています。
書類に印鑑が必要なだけで、わざわざ出社しなくてはならないというのも効率が悪くなってしまいます。
そんな中で注目されているのが「電子印鑑」です。
電子印鑑とはそもそも何なのか?使うとどういうメリット・デメリットがあるのか?また法的効力などについても解説していきます。
電子印鑑とは?
電子印鑑とは、端的に言うと「データ化されている印鑑」のことです。
データの書類にデータの印影を貼り付けることによって、押印ができます。
電子印鑑が法的に認められたのは、2001年「電子署名法」が施行された時です。
電子署名が手書きによる署名や印鑑と同じ効力を持つと法的に認められました。
はんこ文化の撤廃へ
新型コロナウイルスの影響により、リモートワークが主流の働き方となってきましたが、未だに「従来の慣習」がそのまま残り、リモートワーク導入を躊躇っている企業も未だに多くあります。
企業内の体制を変えることは、大変且つ大掛かりになります。
その「従来の慣習」の一つが『押印業務』です。昔ながらの考え方を持っている企業などは、プリントアウトした正式な書類に、正式にハンコが押されていないと受け取らない、というケースが多くみられます。
本来、請求書などの書類に印鑑は必要ありませんが「印鑑がないなら本物だという裏付けがないため受け取らない」という企業は未だあります。
原本であることの証明をハンコに頼ってしまう文化は日本文化の一つです。
リモートワークを推進している政府から見ても「契約書にはんこを押してもらわなければならないから出社する」「上司の承認を受ける必要があるから出社する」といった、押印業務のために出社を余儀なくされた例は未だ少なくありません。
リモートワークに踏み込めないこうした事態を見た政府も、「紙ベースの作業や、押印を前提とした業務を見直してほしい」という要請を企業全体に出し、オンラインで一貫して契約・書類完成できるしくみの導入を推奨しています。
パソコン、タブレット、スマホなど、あらゆるデバイスから電子印鑑で押印できるサービスも多く見られるようになり、企業や個人事業主の業務におけるはんこの撤廃や電子契約の導入を始めやすくなっています。
近い将来、「はんこ」そのものが必要なくなり全て一貫してオンライン上で終わらせることができるようになります。
電子印鑑のメリット
1.ペーパーレス化によるコスト削減
従来の書類のやりとりでは、「印刷代」「書類保管費用」「郵送費」「付随する人件費」など一つの書類に沢山のコストがかかっていました。
電子印鑑を導入するとこういったコストが削減されます。
2.印鑑を持つ必要がなくなる
印鑑の管理は大切なことです。よく使う人の場合は、特に注意が必要です。持ち歩くことも多いと思うので、落としたら大変なことになりかねません。
電子印鑑にすると、失くしやすい小さな印鑑をいちいち持つ必要がなくなります。
データで管理する分、荷物が減ることはもちろん落とす心配もなくなります。
セキュリティ上の問題でもデータ管理の方が安全だと言えるでしょう。
3.取引先とのやりとりが早い
契約書などに印鑑を押す場合も電子印鑑を導入することによって電子契約ができれば、格段に契約スピードが上がります。
従来では「契約書作成」→「契約書をプリントアウト」→「契約書に押印」→「押印した契約書をスキャンしてデータ保存」と工程が多いものとなります。
ですが電子印鑑を用いた電子契約では、プリントアウトした書類に押印して、またスキャンしてデータ保存するという無駄な工程を省くことができます。
データのままデータで押印するので、そのまま保存できます。
4.収入印紙が不要に
印紙税がは、そもそも紙の書類に必要なもののため、電子契約の場合には、その限りではありません。
課税対象にならないので、収入印紙のコスト削減は企業にとっては魅力的の一つであると言えます。
5.リモートワークを徹底できる
「上司の押印が必要だから」などの押印のために出社することは非効率であると言えます。
そんな時にも電子印鑑を導入すればリモートワークを徹底することができ、新型コロナウイルス感染拡大防止にも繋がります。
電子印鑑のデメリット
電子契約を導入している取引先でないと意味がない
電子契約はどちらかが導入していればできるものではありません。
両者が電子契約を導入している場合だけに限ります。
特に昔から紙で書類を管理することにこだわりを持っている企業の場合は電子印鑑を持っていたとしても、電子契約は結べません。
その際は今までの様に印鑑で押印する必要があります。
電子印鑑を導入していない企業もまだまだ少なくないので、今より普及した時にメリットとなることが予想されますが早めに電子印鑑の利用の仕方などを知っておくことは重要になってきます。
電子印鑑に法的効力はあるのか?
従来では朱肉がついた印影でないと法的効力はなく、電子印鑑では法的効力がないのではないかと心配に感じている企業も少ないと思います。
そもそも法的効力のある印鑑とはどのようなものなのでしょか?
結論から言うと、実印だろうと認印だろうが法的効力を持ちます。
ただ不安に思うことは、印鑑を押した人が誰なのかなどの公的証明ができるかどうかです。
実印というものは、役所に印鑑の届出を出して印鑑登録証明書を発行できるか否かで決まります。
印鑑の所有者が誰であるかを証明できるものであるので信用性もそれなりにあります。
電子印鑑の場合は法的効力はあるのでしょうか?
電子印鑑にももちろん法的効力はあります。ですが、認印レベルの効力になります。理由は前述の通り、印鑑登録を役所で行っていないからです。
ただ次に述べるように電子印鑑には2種類あり、データで保存されている電子印鑑に識別情報を埋め込むことができるサービスを利用すれば法的効力は強まります。
電子印鑑には2種類ある
一般的に、電子印鑑は2種類あります。
2つの違いは、「識別情報の有無」になります。
1.単に印影を画像化したもの
一つ目は「印影を画像データ化したもの」です。
実際の印影をスキャンしてPCに取り込み、背景透過させればすぐに使うことができます。
その印鑑データを押印が必要な書類(データ)に画像貼り付けをするだけで簡単に押印ができます。
簡易的な電子印鑑ですので、それだけセキュリティが甘いという難点もあります。
2.印影に識別情報が含まれるもの
もうひとつは、「印影の画像データに識別情報が埋め込まれているもの」です。
上のただ単に印影を画像としてデータで保存するだけでなく、そのデータに様々な情報を加えることができます。
「いつ」「誰が」押印した印影なのかを記録するシステムのもと押印ができるので、法的効力もその分強くなります。
印影に情報が記録されるとなれば、本人性や非改ざん性の証明もできます。
ただこの識別情報を埋め込むことができる電子印鑑を導入する際には、有料の電子契約アプリなどソフトを利用するため、導入コストがかかります。
おすすめ電子印鑑サービス
1.My電子印鑑
出典:My電子印鑑
My電子印鑑の特徴
電子印鑑特有の拡大するとギザギザしてしまう性質に対応した電子印鑑。
PDFで拡大するとぼやけてしまうところをしっかり表示させてくれます。
精度が高いのでセキュリティも万全です。極小の名前の文字を印影内に埋め込むことによって不正コピーも防げます。
My電子印鑑の料金・サービス
認印1,500円〜
※要問い合わせ
https://www.sunsale.co.jp/myden/index.html
2.とろろこんぶ電子印鑑
出典:とろろこんぶ電子印鑑
とろろこんぶ電子印鑑の特徴
押印時に入力した押印情報は「印鑑オブジェクト」に格納されるとともに押印ログに出力されるので押印に関する情報を可視化できます。
電子印鑑オブジェクトに格納された押印情報はいつでも確認することができ、押印ログもソフト内で検索することができ、改ざんがないかもチェックできます。
とろろこんぶ電子印鑑の料金・サービス
1ライセンス 1,200円〜
(価格表は公式サイトにあります)
※要問い合わせ
http://www.tororokonbu.jp/
3.PC印鑑
出典:PC印鑑
PC印鑑の特徴
アフターサポートが充実しているので困ったことがある際にはすぐに相談できます。
また、短期納品も魅力の一つでいますぐ電子印鑑が欲しい場合に助かります。
PC印鑑の料金・プラン
認印 3,000円〜
※要問い合わせ
https://pc-inkan.jp/
まとめ
現代の日本社会では、行政手続きからはじまり一般的なものまで「デジタル化」が進んでいます。
便利な世の中になるにつれ、日本文化も消えることも少なくありません。
その中で今回のような電子印鑑の普及につれ、「はんこ文化」はなくなろうとしていますが、新しいものは導入していかなくては社会に置いていかれる可能性も否めません。
特に電子印鑑はデメリットよりもメリットの方が圧倒的に多いので、導入は早めに行うことをおすすめします。
普及してきて今より多くの企業で採用されている時に、慌てて導入し始めたとしても難なく使用するまでも時間はかかります。
また、電子印鑑を用いた電信契約も両者が導入していないと利用できないことから、取引先に早い段階で確認と同意をとることが必要となる部分だけ注意がしてください。
まだまだ電子印鑑と朱肉をつける押印を併用しなくてはならないものの、近い将来電子印鑑のみになることも視野に入れて早めに導入することをおすすめします。